論理学

『論理学』(野矢茂樹)~あらゆる勉強の基礎として

私が『論理学』を買ったのは、3駅先での集まりの帰りでした。電車の時間まで駅ビルの書店で過ごしていたのです。ふと手に取ったこの本の序文を読んで、「これは買うしかない」と思いました。

論理学

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「どうして内角の和が180度じゃない三角形を思い浮かべることはできないの? ボクが馬鹿だから?」
誰だってそんなものを思い浮かべられるわけはない。だんだん腹が立って殴りたくなってきた。いや、実際殴るしかないのかもしれない。

そんな調子で、物わかりの悪い子供にどうやったら教えられるのかを苦心している場面が、とても楽しかったのです。

■論理学の基礎は、言葉を正しく使うこと

論理学と聞くと難しそうな学問をイメージするかもしれません。実際に難しく、そこでやっていることはまるで数学なのですが、しかし初歩的な論理学は数学よりも国語に近いものです。論理学の第一の目標は、言葉を正しく使用することと、正しく理解することです。論理学を学ぶことは、言語によって何かを習得したり表現したりするすべての場面で役立ちます。

勉強はもちろん、ニュースを読んだときでも、ゲームの攻略法を読んだときでも、言葉を正しく理解できることは必ず役に立つものです。そういう意味で、論理学はすべての学習の基礎となります。

■眠くなるかもしれない

眠い眠い

しかし、本書は論理学の解説書としては読みやすいし、野矢茂樹も頑張ってはいるにしても、やはり他の野矢本と比べると難易度が高いのは確かです。まずもって数学アレルギーの人に対して

∀x((Fx∧Gx) ⊃Hx)

見たいな記号がずらずら並んでるページを見せたら、そっと閉じてしまいますよね。残念ながら記号論理学を扱う都合上、こういった記号による催眠効果から逃れることはできません。

それでも、やはり同種の記号論理学の本としては破格の読みやすさですので、記号に惑わされずに挑戦してみることをおすすめします。

■論理構造を理解するために

論理学というのは推論の学問です。論理的に正しいという考え方が、必ずしも正しい結論を出していることは保証されていませんし、論理学もそんなことは期待していません。

人間ならば猫である
猫ならばかわいい
よって、人間ならばかわいい

は論理的に正しいと言えますが、

人間ならば猫である
動物ならば猫である
よって、人間ならば動物である

は論理的に間違った考え方です。結論としては、後者の方が正しいのですが。

論理学を学ぶことは、人々が何かを判断した際の、判断の道筋、論理の構造を把握することに役立ちます。論理構造が理解できるかできないかで、他者の発言の意図の理解度が全く違いますし、その人に対して賛成するにしろ反対するにしろ、正しい理由で反応するには欠かすことができません。

■二人の和尚と共に

本書でも野矢茂樹は文体に対話を取り入れています。野矢茂樹本人の他に登場するのは、二人の和尚さんです。和尚達は時にすっとぼけ、解説役に鋭いツッコミを入れて困らせたり、解説役に助け船を出したりします。難しい内容を扱っていますので、一方的な解説では読者が理解しきれないと考えたのではないでしょうか。当たり前のように思える部分にも和尚達に突っ込ませることで、自然な形で解説でき、読者にも読みやすい形式にしたのだと思います。

強いて難を言えば、和尚さんがあまり馴染みのない人物なので、キャラクターがよくつかめなかったことでしょうか。アニメキャラクターとコラボでもしたら、一気に読者が増えるかもしれません。
・・・それもどうなんだという気はしますが。

最終的にゲーデルの不完全性定理を扱うのですが、このあたりはかなり難しい内容になっています。学習の基礎として学びたいということであれば、一般的な論理学の範囲である、第二章の述語論理までで十分役立つはずです。